弊社は今から50~60年前に製造された旧車鉄部品を、
少量ですが丹精込めて丁寧に製造しています。
私は今日まで生活に関する工業製品をたくさん修理してきました。
特に子供のゲーム機は反響が大きく自分でも驚いた。電子パーツをほとんど交換せず裏技で切り抜けてきました。
煮炊きする鍋の穴あき修理は私が子供のころに慣れ親しんだ光景の再現です。今日では修理をして再び使うことをしなくなりましたが、以前に外国の女性が言った「もったいない精神」がいつも私の頭を持ち上げる。
これらの修理費用はもちろん無料であり、取り替えた部品代金のみの請求のため、遠方からでもやって来てくれる。
私は「何でも屋修理」が生業でないためストレスは溜まらず、ちょっとした処方箋気分だ。
先日も厄介な修理が隣町から頼られ持ち込まれた。昭和50年製造の自動販売機である。小腹がすいたときにお世話になった諸兄も多くいたと思う。それが右の自販機です。この自販機が全国でも稼働しているのは無いに等しく、物珍しさもあり集客率は高い。とりあえず電源を入れてみるも反応なし・異音ありの状態。
皆さんがよく理解している内燃機関は吸入・圧縮・爆発・排気とメリハリがハッキリしピストンの現在位置を靴の裏で感じ一つの診断基準にもなるだろう。今回の自販機の構造は、食品を保温するために大型のヒーターが組み込まれ、その熱を隅々まで伝える為のこれまた古めかしいファンが一等地を占拠している。この送風モーターを分解して驚いた。よくぞここまで使い込んだものだと妙に感心した。軸受けはすり減りシャフトは極端に細く段差がクッキリついていた。つまりクタクタなのである。この状態のモーターが三台内蔵されていて全て大修理を余儀なくされた。また食品容器を移動させるリンク式エレベーターが複雑に組み合わされていた。旧い二輪車と同じで交換部品は望めない。代用品でもあれば助かるのだが難しい。毎度のごとく「無い物は作る精神」で乗り切っていく覚悟だが、不良部品が出るわ出るわでなかなか前に進まない。この自販機不具合の最大原因は保温装置が内蔵されている為、熱がこもりその熱源で油脂類は乾燥し正確に作動しなければならないリミットスイッチが、変形しON-OFFの切り替えがおぼつかないことであった。
皆さんお気づきと思うが修理は推理である。毎回難物修理のキモは雑学の積み重ねとアキレス腱に相当する柔軟な思考力です。考え方は違えど江戸時代の「からくり人形」などは本当に思考力の塊でないだろうか。物の乏しい時代によくぞ考えだしたと思う。それからすると今日の豊富な材料・加工技術等はもてあまし気味ではないでしょうか。「カラクリ」と言う言葉が使われだしたのも江戸時代と私は推測します。余談ではあるが今日たくさんの自販機があふれている。自販機の原型はギリシャ時代に考案された聖水販売機です。コインを入れると、てこの原理で栓が開けられ一定量の聖水が外に流れ出すという構造で、今日一世を風靡している自販機の元祖です。
最後になりましたがコストを度外視しての修理はとどまるところを知りません。 身の丈にあった雑学修理は楽しいもので、厄介なストレスから解放され完成度の高い修繕ができるでしょう。
ヨシカワオートクリニック 吉川 比呂志